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2023/09/01 14:23
日本各地で同時進行中の人口減少に漏れることなく人が減ったこの地で、
かつて山林を拓き築かれたとされる田んぼは、植林されたり、梅を植えられたりした。さらに人が減る中、その梅畑も手入れが届かなくなりつつある。
「そのおかげで」と言っては弊害があるけれど、体を動かせば、自然に育った梅をいただくことが出来る。手放せば、野に戻ってしまう田畑の管理は、たとえ収穫物がなくても「暮らせる里」を維持する担保だ。
その時々の、この地で暮らした人々が、その時々の在り方で、この地で暮らしてゆこうとした。その上に、私たちは今暮らす。
私たちが受け取る恵み。
初夏の連休を迎え、梅雨がやってくる前までに、誇る産物であるお茶の仕事、家々の田んぼ、と気忙しく、賑やかな日々の合間に、急いで梅仕事をする。
梅の食し方は数あれど、百花園で梅肉エキスを作ることにしたのは、清らかなこの郷で育った安全自然な梅ならば、嗜好品よりも養生のお役に立てるものが良いと思ったこと。そして、街から遠いこの地に、重い瓶や大量の調味料を運び込み、また送り出すよりも、ただ梅のみで作れて、しかもギュッと凝縮させて、街場へお届けできるところが良いと思ったからだ。
コンテナ満杯の青梅から種を取り出し、果汁にする。さらに25倍近くまで煮詰める作業は、自家用の量であっても、気の遠い仕事。
だから、あれ・これのみんなに声を掛け、手を貸してもらった。
結果、みんなのワイワイする声や、それぞれが好きな音楽を聞きながら煮詰められた梅肉エキスは、鮮度抜群な上、郷の人の温かみも込められたようで、一層大切な一品となった。
生産というほどの量もなく、手作業でコツコツ作るこの形態はなんだろう?と、ふと考え、
遥か昔に社会科で習った「家内制手工業」という言葉を思い出した。
だとしたら、手を貸してくれたあれ・これのみんは何にあたるのだろう?雇用者?委託先?なんだかしっくりこない。
家=familyの解釈を拡大したらどうだろう。それは、限界集落と呼ばれるこの地のこれからの暮らし方も照らすように感じた。(※)
奇しくも、出来上がった瓶のラベルを作る際、加工場の主と販売者である私の屋号が並び、
「地球家族」「百花園」となんともピースフルな世界が、無表情なはずの表示ラベルに現れた。
「楽園のようだね」と笑い合う私たちの予想以上に、私は今既に最幸な場所にいるのかもしれない。
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そんな日々の中、息子が誕生日を迎えた。祝いに来てくれた母(習字が上手い)に商品ロゴを書いてもらう。
気がつけば、赤ちゃんの体は、大人を小さくした形の躯体に変わった。母親としての今日までを思い返すと、苦く苦い。
けれど、この躯体は、郷の山を見つめ、水を飲み、土を踏み、作物を食し、皆々に名前を呼ばれながら、育ったのだ、と思えば、なんとも救われて、目頭が熱い。
ここで育てられたことを、忘れないでね。たとえ忘れても、体からは無くならないから良いけど。
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手を伸ばした先、見上げる青い梅々に青空が透ける。それを見る時、サブっと心が洗われて、
身も心も、美しく甦ったように感じる。傍にこの郷で共に暮らす人の声が響く。
梅肉エキスの効能あれこれ以上に、この日々が私を生かす。
どんなご縁に繋がるのか、まだ分からないけれど、清々しい今日。
R5年初夏
(※NPO法人抱樸の奥田さんが福祉の分野で「家族機能の社会化」と仰っておられますが、人口減少の著しい中山間地域にもそのような仕組み化が必要なように思います。 抱樸HPhttps://www.houboku.net/about/)